ボツ小説
- 1 :1 :2004/03/23(火) 08:25
-
なんとなく入ったカレー屋でなぜかソニンが店員をしていた。
- 2 :1 :2004/03/23(火) 08:26
-
動揺をなんとか隠し切って私はなんでもなさそうに席についた。店内はガラガラだった。こちらにゆっくりと、だるそうに近づいてくるソニンはあきらかに私に
気がついている様子だったがお互いに言葉はなかった。
ごとんという音がしてテーブルが軽く揺れた。顔を上げるとやはりソニンが無愛想な顔で、
「注文は。」
と言った。
- 3 :1 :2004/03/23(火) 08:26
-
私はすばやくメニューに目を通して、一番早く来そうな、一番早く食べ終われそうなものを探した。やがてカレーライスしかないことに気がついた。私は顔を上
げずに言った。
「カレー。」
「はい。」
ソニンはそっけなく言うと奥へ引っ込んだ。私はほっと息をついた。厨房の奥は席から見えないようになっていて私は落ち着くと同時に色んなことに考えをめぐ
らすことが出来た。普通にアイサツすればよかったとか、そう言えば最近ソニン見ないなあとか。しかし何故ソニンがここに居るのかは幾ら考えてもわからな
かった。
- 4 :1 :2004/03/23(火) 08:27
-
カレーはすぐに来た。ソニンは全く感情のない声で「ご注文は以上ですか。」と言った。そして私がうなずくとすぐにまた奥へと行ってしまった。
ああ、気まずいな、と私はカレーをほおばりながら思った。なんとなく話し掛けるキッカケが欲しかった。やがて途中まで食べ終わったところで私はソニンを呼
んだ。
「あのさ、福神漬け頂戴。」
- 5 :1 :2004/03/23(火) 08:27
-
ソニンは返事もせずに近づいてくると、どん、とテーブルに銀の入れ物を置いて、さっさと引っ込んでしまった。私はやるせない気持ちでそれをどばっとカレー
にかけた。一気にかきこんだけど味はほとんどわからなかった。
もう何も考えずに食べ終わって、とっとと帰ろう、と思った。全部胃に無理やり流し込んで、私はバッグから財布を取り出そうとした。
財布はドコにもなかった。
「オキャクサン財布落としましたね。」
後ろから聞こえたソニンの声には、はじめて感情がこもっていた。それはひどく嬉しそうな声だった。
- 6 :1 :2004/03/23(火) 08:27
-
と言うわけで私は走っている。
「陽が沈むまでに帰ってこなかったら・・・・・・」
ソニンはそこで言葉を切ってにやりと笑った。その手には私の携帯とバッグがあった。質として取られたものだ。
「ああどこで落としたんだろう財布。」
考えてもキリがなかった。とにかく私は家へとひた走るのみだ。
- 7 :1 :2004/03/23(火) 08:28
-
アスファルトからは砂埃みたいな湯気みたいなものがそこらに立ち上っていて人通りはぜんぜんなかった。「蜃気楼だ。」と、蜃気楼なんて見たこと無いけど走
りながらそう思った。すでにおでこからはだらだらと汗が流れてきていた。太陽はほとんど真上にあって春先とは思えないくらい暑かった。
どうも走りづらいと思ったらヒールをはいていた。脱ぐのもめんどうだったけど折れそうな気配を感じたのでしばらく走った後私はそれを脱ぎ捨てた。ニ、三歩
走ると裸足にも慣れた。その時一台のバイクが後ろから走ってきて私の横でとまった。私もあわせて立ち止まった。
- 8 :1 :2004/03/23(火) 08:28
-
それは私の弟だった。
「何走ってんの。」
と弟は言った。私はぜえぜえ息をつきながら辛うじて
「……ソニンが。」
とだけ言うことが出来た。弟は「へえ」と言って笑った。
「ソニンから逃げてんだ、俺と一緒だな、さすが姉」
私はその鼻面のあたりを思いっきりぶん殴った。それから言った。
「逆だよ。てゆーかあんた金ぜんぶ出して。」
- 9 :1 :2004/03/23(火) 08:28
-
鼻をおさえてうずくまる弟は返事をしなかった。私は強引にそのポケットから財布を取り出して、すぐに店へと走り出した。見上げた太陽はもうずいぶん落ちて
きているようにも見えた。ふたたびおでこから汗が流れ出すのを感じた。疲れは全く感じなかったがなんとなく気だるい感じを頭の奥に覚えていた。
赤い看板を目印にひたすら走った。店にはなかなか戻れなかった。真上にあったはずの太陽はもうずいぶん落ちてきていた。それっぽい交差点は何度も通り過ぎ
たけどあの赤い看板はなかなか見つからなかった。もう何時間走りつづけているかわからなかった。こんなことなら弟のバイクで送ってもらえば良かったと、後
悔しながらも足は止めなかった。
- 10 :1 :2004/03/23(火) 08:29
-
空は遠くのほうからじょじょに赤みを帯びてきていた。陽が沈むまでというのは一体どこまでを指すのだろうと私はすこし考えた。走りながら右手に握っていた
財布を左手にもちかえると汗でじっとりと濡れているのがわかった。その時不意に右手に赤いものが目に入った。見るとあの看板だった。私は足を止めずにほと
んど直角に曲がって開けっ放しのドアから店に飛び込んだ。
- 11 :1 :2004/03/23(火) 08:29
-
ソニンはさっきのテーブルに足を乗っけたまま私を待っていた。ぜえぜえと荒い息をする私を冷たい目で見ながら、口端を曲げるようにして笑った。
「ごうかく。」
テーブルの上には私のバッグと携帯が乗っていた。私は息を整え終わると弟の財布を取り出して中を開いた。そして顔を上げずに言った。
「カレーライスって幾らだっけ。」
「500円。」
「ふぅん。」
私は言いながら100円玉の数を数えた。丁度五枚。そのほかに硬貨はなかった。札入れも開いてみたがレシートしか入ってなかった。
心臓の鼓動がはやくなるのを感じながら私は言った。
「消費税は。」
ソニンの返事は一拍おくれた。私が顔をあげると彼女はさっきとまったく同じ顔で笑っていた。
「込み。」
- 12 :1 :2004/03/23(火) 08:29
-
すうっと背中のほうから楽になった。私は笑い出しそうになりながら財布をぽん、とソニンに向かって投げてわたした。
「じゃあ返してもらうね。」
と言って私はテーブルへ向かい、バッグと携帯を手にとった。その時メニューが目に入った。表紙に書かれた文字に一瞬、私の目は釘付けになった。
【ちなみに福神漬けは+30円です。お気軽にお申し付けください。あと食い逃げは殺します。】
- 13 :1 :2004/03/23(火) 08:29
-
手書きだった。ふたたびずぅんと重いものがおなかからこみ上げてきた。私は財布を開けようとするソニンを横目で見ながらゆっくりと後ずさった。幸いにもソ
ニンがまだ札入れをチェックしているところで出口に行き着くことが出来た。
開けっ放しのドアから店を飛び出すと私は振り返らずに走った。
- 14 :1 :2004/03/23(火) 08:30
-
またあの終わりのない通りが私を待っていた。私はバッグに携帯を入れてジャマにならないよう肩にかけた。陽はほとんど沈みかけていて空は赤黒く染まってい
た。まるで乾きかけた血のような色だと私は走りながら思った。
一つ目の交差点のところでバイクにまたがったままの弟が笑っていた。
「乗んなよ、姉ちゃん。」
その時後ろで激しい音がした。振り返るとあの赤い看板が激しい勢いで吹っ飛び、負けないくらいの勢いでソニンが飛び出してくるのが見えた。
- 15 :1 :2004/03/23(火) 08:30
-
私は慌てて後部座席に飛び乗った。弟がアクセルを回しながら言う。
「なあ、姉ちゃん」
「何よ。」
「やっぱり俺と一緒だな。」
弟が嬉しそうにそう言うと同時に、すさまじい勢いでバイクは走り出した。慣性の法則にしたがい私は背中から地面に落ちて後頭部をつよく打った。
うううとうめく私の視界はもうすでに真っ赤だった。それは夕焼けの色なのかもしれなかった。私を見下ろすソニンの顔に貼り付いた笑いを見ながら弟も笑って
いたことを思い出した。だから私も笑おうとしたがそれはくくくという声にしかならなかった。
- 16 :1 :2004/03/23(火) 08:30
-
ボツA 終
- 17 :2 :2004/03/23(火) 08:34
-
飯田さんはさっきからピアノをめちゃくちゃに弾いているとても適当だ。
メロディも和音もあったもんじゃない。
でもそれを言うと矢口さんのように背骨から腰骨にかけて串のようなもので突き刺されてしまうから私は口を閉じたまんまじっとその不愉快なピアノの音色を聞
いているのだ。
- 18 :2 :2004/03/23(火) 08:34
-
つんく♂さんが部屋に入ってきても飯田さんはピアノを弾きつづけた。
それはますます強い調子になってそのデタラメっぷりも強まっている。
耳を塞ぎたかったがそうすると石川さんのように上唇から髪の生え際くらいまでの皮膚を剥がれてしまうから私は両手をヒザの上に揃えておいたままだ。
- 19 :2 :2004/03/23(火) 08:34
-
つんく♂さんが何かを叫んでいるけれどピアノの音はそれを遥かに上回りかき消す。
私は飯田さんにつんく♂さんが来たことを伝えようかとちらっと思う。
ただピアノを弾いている時の飯田さんに触ると辻さんのように×××に棒のようなものを胃を突き破るくらいの勢いで何度も差し込まれてしまうから私は目を閉
じて眠ったふりをする。
- 20 :2 :2004/03/23(火) 08:34
-
もしかすると飯田さんはわざとアピールで、自作の曲をつんく♂さんに聞かせているのかもしれない。
そう言えば「カオリは作曲も出来るから」というようなことをつねづね言っていた気がする。
「ほんとですか?じゃあ聞かせてくださいよ」と言ったまま行方不明になってしまったれいなちゃんは今ごろ一体何をしているのだろうかと思う。
- 21 :2 :2004/03/23(火) 08:35
-
「れいなちゃんはわたしの大切な友達だったのに。」と私はつぶやく。
いつのまにかピアノの音はやんでつんく♂さんと飯田さんはもの凄い顔でこっちを睨んでいる。
「わたしがそんなに邪魔ですか」とたずねる前に飯田さんの手が私の首にかかってつんくさんは嬉しそうにチャックを下ろした。
- 22 :2 :2004/03/23(火) 08:35
-
ボツB 終
- 23 :3 :2004/03/23(火) 08:39
-
どんよりとした天気の午後3時なっちが鶴嘴を持って訪ねてきた。
「どうしたのなっちその鶴嘴」と私は尋ねた。するとなっちは笑って、
「芸能界に巣食う悪鬼羅刹共を鏖にしてその血潮で罪過を贖わせるべさ」と血走った目で言う。
「ごっつぁんも一緒に行くべ。ほらこれを使うべさ」と言ってなっちは懐から一振りの刀を取り出した。
「梨地螺鈿金装飾剣の複製品だべ、切れ味は抜群っしょ」
- 24 :3 :2004/03/23(火) 08:39
-
仕方なく二人連れ立って事務所へと向かった。正面扉を開けた刹那火の玉のような勢いでなっちが躍り込んで往く。正に鎧袖一触続々と斃れていく敵達を省みる
事も無くなっちは次々と鶴嘴を振り翳しては其処らの人間を薙ぎ倒して行く。糾える縄の如く絡み合い折重なる遺骸を仕方なく私も後ろから梨地螺鈿金装飾剣で
突ついたりもしてみる。
逃亡を企てて窓の辺りで啀み合っていた二人を一刀両断。後は社長室を残すのみにあたり、なっちは一息深呼吸をするとそのまま飛び込んで往く。社長の驚愕し
た顔は稍あって寛恕を請う様な笑みに変わるも既に其の喉笛は鶴嘴により十文字に斬り裂かれて居る。社長は嘶く様に一寸吼えると踞り直に斃れた。殷賑を極め
たUFAもここに時代の塵芥と化したのであった。
- 25 :3 :2004/03/23(火) 08:40
-
「全ての事がまるで泡沫の夢の様に感じるべさ」
となっちは菠薐草サラダを頬張り乍ら言う。私は蕃茄を口にしながら「その通りだね」と笑った。
テレビではニュースが流れている。音楽事務所に殴りこみ。犯人は不明。流れてくる声を聞きながらなっちがぼんやり言うのだ。
「さいしょからこうすればよかったよ」
「そうだね」と私も笑った。
- 26 :3 :2004/03/23(火) 08:40
-
ボツC 終
- 27 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 19:22
-
ボツAが非常に面白い。
- 28 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 19:40
-
BとCがよくわかんね
- 29 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 20:09
-
>>28
だからボツなんじゃない。
意味はわからんがシュールで面白いなと思ったよ。
- 30 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 20:21
-
シュールってそういう風に使うもんじゃないよ
- 31 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 21:57
-
从0‘ ∀‘ 从<期待ニダ
- 32 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 22:13
-
sageで立ったスレをageる池沼
- 33 :名無し娘。 :2004/03/23(火) 22:37
-
>>32
ドンマイ
- 34 :名無し娘。 :2004/03/24(水) 18:22
-
Aがなぜボツったのか?秀逸だと思うんだが。
- 35 :名無し娘。 :2004/03/24(水) 23:14
-
Aの雰囲気が好きだ
- 36 :4 :2004/03/25(木) 08:15
-
その時モーニング娘。のみなさんは広い会議室でなにやら難しい顔で会議をしていた。
カオリが眉間にしわをよせて言う。
「私たちはこれからの娘。の展望について語らなければいけない。右、矢口から。」
「はい、矢口です。」
とやぐっちゃんが立ち上がって喋りだす。
「これからの私たちが押さえるべき重要なポイントはふたつ。ひとつ、新しいファン層の獲得。ひとつ、古いファン層の維持。」
「つまり改革と保守ですね。」
「それは重要なポイントだ。」
みんな頷く。真顔だ。
- 37 :4 :2004/03/25(木) 08:15
-
そこへ市井ちゃんが入ってくる。笑顔だ。
しかしみんなは市井ちゃんに気づかずに議論に熱中している。
「見てください。これが今月の我々が出演した番組の視聴率一覧です。これによると。」
「ほほう。興味深い。」
「しかしながら。」
出されたスライドを前にして会議室では短い語尾の、鋭い言葉が交わされていく。みんな真剣だ。額に汗を浮かべ、つばを飛ばしながら議論は続く。
「バラエティ路線を開拓していかなければならないのではないか。」
「いや、もう少しドラマ部門に力を入れるべきでは。」
「忘れてはいけない、我々は歌手だ。歌こそが。」
そんな話をよそに市井ちゃんは壁にそっててくてくと歩く。やがて部屋の隅のゴミ箱を見つけ、嬉しそうに目を輝かせる。
- 38 :4 :2004/03/25(木) 08:15
-
がしゃん。
おおきな音がして娘。たちは一様に目を向ける。市井ちゃんは倒れたゴミ箱と、みんなを見比べるようにして得意げな顔で笑っている。
市井ちゃんは無言だ。みんなも。
「・・・あのねえサヤカ。」
「今、大事な話してるから。」
すこしの沈黙の後カオリとやぐっちゃんが同時に口を開く。市井ちゃんはつまらなそうに口を尖らせる。
「出てって、とは言いませんから。」
「大人しくしててくださいね。」
そんな声も、出る。
- 39 :4 :2004/03/25(木) 08:16
-
再び議論がはじまる。カオリが悲鳴のような声をあげる。
「あなたたちには危機感が足りないの。五万枚手売りしろとは言わないけれど。」
「飯田さんの考え方は古いんですよ。これからの時代は。」
「そうだよカオリ。否定してたらなんもはじまんないじゃん。」
「矢口さんそれは違うんじゃないですか。飯田さんだって考えが。」
「梨華ちゃんは口はさまないでややっこしくなるから。」
やぐっちゃんが怒鳴り、梨華ちゃんは顔を真っ赤にする。そして市井ちゃんはいつのまにかやぐっちゃんの後ろにスタンバっている。
そして静かな動作で両手をそっと伸ばして、やぐっちゃんの唇を指で、上下からはさむ。
- 40 :4 :2004/03/25(木) 08:16
-
口をはさまれたやぐっちゃんは一瞬驚いたようにびくっと跳ね、それからすぐに手を振りほどく。苛々した口調で、言う。
「口をはさむってそういう意味じゃないの。」
市井ちゃんはすでに聞いていない。部屋の隅でひたすらに笑い転げている。
「もうよそう、矢口。」
「でも。」
思わず立ち上がりかけたやぐっちゃんを静かにカオリが制する。そして諦めたような口調で言う。
「サヤカにマジレスしたってしょうがないよ。」
- 41 :4 :2004/03/25(木) 08:16
-
やぐっちゃんは諦めたように首を振った。みんなは静かにうんうんと頷く。
真顔だ。
静まりかえった部屋に、市井ちゃんの笑い声だけが響いている。
私はそれを物陰からぜんぶ見ていました。
ちょっと泣きそうになりながら。
横では圭ちゃんがおいおい泣いていました。
- 42 :4 :2004/03/25(木) 08:17
-
ボツD 終
- 43 :5 :2004/03/25(木) 08:17
-
夕焼けを見ながら考えた。夕焼けが切ないのはなんでだろう。きっと子供の頃遊んでいて、お母さんが
迎えにきてもう帰らなくちゃいけなかった時間、その記憶が残っているから・・・だと思った。私はそれを
吉澤さんに話した。
「え、でもウチ迎えになんて来なかったよ」
と言って吉澤さんは笑った。
「でも夕焼けって切ないですよね。」
と私はたずねた。吉澤さんはまだ笑いながら、
「うん。」
と言った。
- 44 :5 :2004/03/25(木) 08:17
-
次の日私は夕焼けを見ながら考えた。夕焼けが切ないのはなんでだろう。きっと夕焼けの赤には
見ている人を切なくさせる成分が含まれているんだ、と思った。私はそれを矢口さんに話した。
「でも矢口こないだ朝焼け見たけど全然切なくなかったよ」
と言って矢口さんは笑った。
「でも夕焼けって切ないですよね。」
と私はたずねた。矢口さんはまだ笑いながら、
「うん。」
と言った。
- 45 :5 :2004/03/25(木) 08:18
-
その次の日私は夕焼けを見ながら考えた。夕焼けが切ないのはなんでだろう。きっと昇っていた太陽が
沈み行く、その事実が切なさを醸し出しているんだ、と思った。私はそれを飯田さんに話した。
「何それ。アンタ何が言いたいの。ねえ。」
と言って飯田さんは怒った。
「でも夕焼けって切ないですよね。」
と私はたずねた。ぷちっという音がして、飯田さんは右腕を上げた。
- 46 :5 :2004/03/25(木) 08:18
-
そのまた次の日私は病院のベッドから夕焼けを眺めていた。私がこうしてる間にもみんなは仕事して
レッスンして笑って歌って踊っているんだなあ、と思ったら右目から涙がひとしずくぽろっ、とこぼれた。
私はそれを夕焼けのせいにした。夕焼けが切ないのはなんでだろう。
その時病室のドアが開いた。「お見舞いだよ。」と言って辻さんがヤキソバを持って入ってきた。私は
辻さんに夕焼けが切ない理由をたずねてみた。
「なにそれ。新曲?」
辻さんは笑いながらそう言った。私はため息をついてヤキソバの蓋をあけた。半分しか入ってなかった。
- 47 :5 :2004/03/25(木) 08:18
-
さらにまた次の日私はまだ病院のベッドから夕焼けを眺めていた。一日何もすることがない、というのは
ずいぶん久しぶりでそれが二日も続くとなんだか退屈で仕方なかった。仕方なく考え事なんかしてたけど
そのうち悪い想像とか不安とかどんどん湧き上がってきて私は悲しくなった。私はそれを夕焼けのせいに
した。夕焼けが切ないのはなんでだろう。
その時病室のドアが開いた。「お見舞いだよ。」と言って加護さんが手ぶらで入ってきた。私は加護さんに
夕焼けが切ない理由をたずねてみた。
「そんなことよりこのTシャツどう?どう?」
加護さんは笑いながらそう言った。私はため息をついて加護さんが着ているTシャツを誉めた。色あせた
古着でとても可愛い感じだった。
- 48 :5 :2004/03/25(木) 08:18
-
そうしてまた次の日ついに退院した私は楽屋の窓から夕焼けを眺めていた。隣でれいなとさゆが言った。
「忙しくてお見舞い行けなくてごめんね。」
「辻さんと加護さんに代表で行ってもらったんだ。」
私は返事をせずに笑って頷いた。二人もそれでやっと笑った。
「大盛りのヤキソバどうだった?差し入れ。あたしのアイディアなんだよ。びっくりしたでしょ。」
とれいなが言った。
「お見舞いのTシャツはどうだった?あれ選んだのあたし。気に入った?」
とさゆが言った。
私はあいまいに頷いて、視線をぼんやりと窓の外にうつした。真っ赤な空の遥か向こうでは、傾いた太陽が
今にも地平線に沈もうとしているところだった。
こりゃあ切ないや、と私は思った。
- 49 :5 :2004/03/25(木) 08:18
-
ボツE 終
- 50 :名無し娘。 :2004/03/25(木) 11:56
-
なんだろうこの感情はなんだろう
まったく言い表すことができない
- 51 :名無し娘。 :2004/03/25(木) 15:11
-
ちらしずし
- 52 :名無し娘。 :2004/03/25(木) 16:59
-
4は最初のインパクトが抜群だったのに尻すぼみだったな
5は不条理劇か
- 53 :名無し娘。 :2004/03/25(木) 18:58
-
ボツEが素晴らしい。
- 54 :名無し娘。 :2004/03/25(木) 20:57
-
どうみても傑作短編集なんですが
- 55 :名無し娘。 :2004/03/25(木) 22:26
-
そうでもないな
玉石混淆
- 56 :名無し娘。 :2004/03/26(金) 17:48
-
玉石混交?
- 57 :名無し娘。 :2004/03/26(金) 18:47
-
「ボツ小説」ていうタイトルなのに違いない。たぶん。
- 58 :名無し娘。 :2004/03/26(金) 19:24
-
ボツだからこそ気軽に書けるのかもね
- 59 :6 :2004/04/05(月) 21:34
-
カオリが一冊の本を片手に楽屋に入ってくる。
困った顔で言う。
「のんちゃんが出てこないの」
テーブルにどさっと置かれたそれはまごうかたなき辻希美写真集「のの」だった。
頭がくらくらするのを辛うじておさえながら私は言う。
「なんの話なの」
するとカオリは困った様に笑って
「のんちゃんが本の中から出てこないの」
ぱらぱらとページをめくりながら私は言う。
「出てこないって言うか、最初からこれ写真だし」
- 60 :6 :2004/04/05(月) 21:34
-
「違うの」
カオリは私の言葉を遮って
ぐっと手首を掴んでくる。
物凄い力だ。
痛い。
「見てよ、こんなページ無かったでしょ」
指差されたページは辻ちゃんが笑っているだけで
もちろんおかしなところなどないし
私が全ページを把握しているはずもない
のだが
「あ、ほんとだ」
と私は言った。
だって手首を締め付ける力ときたら、まるで万力。
「きっときつく叱ったから出てこないんだ、ねえごっちんお願いのんちゃんを捕まえて」
カオリは血走った目でそうせがんだ。
- 61 :6 :2004/04/05(月) 21:35
-
私は手首を振りほどくことだけを考えていた。
やがてひとつ名案を思いつく。
「あ、そうだ、じゃああたしここで構えてるから、カオリは辻ちゃんをそこから追い出してよ、そしたらあたしが戻れないように捕まえるから」
「わかった」
と言ってカオリは辻ちゃんをそこから追い出した。
- 62 :6 :2004/04/05(月) 21:36
-
辻ちゃんはぽんと飛び出した後、すぐに気づいて写真集のなかに戻ってしまった。私は呆然と突っ立っていた。とたんにカオリの怒鳴り声が響く。
「捕まえてってカオリあれほど言ったでしょ、何ぼーっとしてんの!」
襟首を掴まれて、私はがんがん怒鳴られる。
どうしよう。
怖い。
「大体ごっちんは人の話を軽く考えすぎなの、そもそも仲間ってのはねえ」
説教を食らいながら、頭がぼーっとしてくるのを感じる。
辻ちゃんが写真集のなかから出てこなくなった理由が、ちょっとだけわかった気になったその時、視界のすみに入ったのは、たまたま持ってた「後藤真希写真集
―後藤真希 in Hello!Project2003夏」だった。
スキをついて私はそれに飛び込む。
そしたらカオリはニヤリと笑って本を閉じた。
私は
- 63 :6 :2004/04/05(月) 21:36
-
ボツF 終
- 64 :7 :2004/04/05(月) 21:37
-
辻と加護が脱退したその日カオリは涙をダラダラダラダラ流しながら言った。
「涙に終わりはあるのかしら」
私は困った。もちろん、止まることのない涙など有り得ないはずだった。しかしカオリの目からはさっきからずっと変わらないペースで涙がダラダラ流れていて
それは止まることがないようにも思えた。
「教えて矢口、涙に終わりはあるのかしら」
その時カオリの髪は風もないのにざわついた。なんとなくだけど答えないと殺される気がした。なんとなくだけど適当に答えても殺される気がして。
- 65 :7 :2004/04/05(月) 21:37
-
仕方なく私は涙の終わりを探すために七つの山を越え七つの海を旅した。それは果ての見えない旅だった。私は行く先々で色々な人に出会い色々なことを学ん
だ。そして別れの日には必ずこう聞いた。
「涙に終わりはあるんですか。」
みんな笑って首を振った。だから私はどんどん次の街から、街へと進んで。
- 66 :7 :2004/04/05(月) 21:37
-
気が付けば私はしらない山奥にいた。ひゅうひゅうなる風が私を震わせて、うっそうと生い茂る木々の群れが私に恐怖をもたらした。私は完全に道に迷ってい
た。陽は完全に傾いていていつ光が消えてもおかしくない、そう思った時私の頬を涙がつたった。
私は冷たい地面に突っ伏す。泣いてる場合じゃないと、思えば思うほどそれは止まらなくて。
- 67 :7 :2004/04/05(月) 21:38
-
いつか完全に夜になっても私はずっと泣きつづけた。涙に終わりはないんだって、そう思った時私の肩に手が触れた。
「矢口、助けに来たよ」
顔を上げるとカオリが笑っていた。頭上ではヘリコプターがぱらぱら音を立てている。私全然気づかなかった。カオリはまだ笑ったまま。私はありがとうも言わ
ずに、ただひたすらに泣きつづけて。
- 68 :7 :2004/04/05(月) 21:38
-
でもそれは嬉し涙だった。ほっとした涙だった。涙に終わりなんてなければ良いと思える涙だった。そう思ったら涙はすぅっと止まった。私は笑う。
「カオリわかったよ、涙に終わりはあるんだよ」
- 69 :7 :2004/04/05(月) 21:38
-
カオリはうすく笑いながら言った。
「ねえ矢口、カオリの脱退が決まったよ」
- 70 :7 :2004/04/05(月) 21:38
-
ボツG 終
- 71 :名無し娘。 :2004/04/05(月) 21:43
-
筒井康隆っぽい、といえば褒め過ぎか。
- 72 :名無し娘。 :2004/04/05(月) 23:59
-
ちょいと背筋がゾクッとした
- 73 :名無し娘。 :2004/04/06(火) 00:29
-
筒井康隆を軽く見すぎな>>71
- 74 :名無し娘。 :2004/04/11(日) 03:29
-
初期の筒井康隆っぽいね
- 75 :名無し娘。 :2004/04/12(月) 21:28
-
不条理っていいね
- 76 :8 :2004/04/15(木) 00:31
-
私が楽屋でぐったりしていた時の話です。
突然カオリとなっちが入ってきました。二人とも背の高い帽子被ってて・・・まるで、コックみたいだな、と私は思ったのです。
「絶対おいしいから、食べてみて」
カオリがそう言って崩れたお団子みたいなものを出してきました。
勘弁してくれよ、と私は思ったのです。
けれど、壁際に追い詰められて、脱出することが出来なかったのです。
- 77 :8 :2004/04/15(木) 00:31
-
どうやらそのお菓子もどきはアンブランという名前のようです。
なっちはそれがとても画期的だと笑っていました。
仕方なく本当に仕方なく私はそれを一口ぱくっと食べたのです。
「どう?」とカオリが言いました。
なんていうかこう、微妙に、吐き出すまでもないんだけど、かと言ってあんまり長いこと味わいたくないっていうか、ほんとうに、微妙に、まずかったのです。
例えるならあんことモンブランを一緒に食べたような味でした。
- 78 :8 :2004/04/15(木) 00:32
-
「やっぱりダメだったか」となっちが薄笑いを浮かべながら呟きました。
それから新しい包みを取り出しました。
「次は、モンコを試してみよう」
あぶない名前だな、と思いました。
「そうだね、モンコならおいしいかもしれない」
そう言ってカオリも笑うのです。
- 79 :8 :2004/04/15(木) 00:32
-
でもちょっと待って。モンコのモンはおそらくモンブラン。コはおそらくあんこ。
そしたらアンブランと一緒じゃない。
って言おうと思ったんですけど、もうその時には口のなかにモンコが突っ込まれていました。
次の瞬間私ほんとうにびっくりしました。
おいしいのです。
- 80 :8 :2004/04/15(木) 00:32
-
「すごいすごいこれならハロー・プロジェクトやめて和ケーキ屋やっても成功するよ」
と私は言いました。
カオリとなっちは嬉しそうに、でもちょっと寂しそうに笑って
「ありがとうごっちんちょっと自信ついたよ」
「また新作が出来たらお願いね」
なんて言いながら手を振って出て行きました。
- 81 :8 :2004/04/15(木) 00:32
-
二人が居なくなってからも私は口のなかを舌で舐めまわすようにして後味を楽しんでいました。
おいしいものを食べたおかげでしょう、さっきまでの陰鬱な気分が嘘のように私の心はまるで春の空のように。
その時ふと、かすかに桃の味がしました。
きっと春のせいでしょう。
- 82 :8 :2004/04/15(木) 00:33
-
ボツH 終
- 83 :9 :2004/04/15(木) 00:35
-
事務所の一室。コの字型のテーブルに娘。のメンバーが揃って座っている。そわそわと落ち着きの無い様子が急に集められたことを示している。
そこへつんく♂がおもむろに入ってくる。慌てて挨拶する娘。たちを見回すようにしてつんく♂が言う。
「吉澤、お前の卒業が決まった。おめでとう。」
楽屋の空気は固まる。言われた吉澤はぽかんと口をあけている。
「なんや嬉しくないんか。」
つんく♂の頬が小刻みにぴくぴくと震えだす。
- 84 :9 :2004/04/15(木) 00:35
-
「そんな、急すぎます。」
とリーダーの飯田が口をはさむ。彼女の顔も声も真剣かつ切実さがこもったものであり本当にメンバーの卒業を反対していることがうかがえる。一方つんく♂は
と言えばすでに顔を真っ赤にして怒りだす準備をはじめている。
「なんや、オレの決定に文句があるんか。」
そう言う息が酒臭い。そばにいた亀井が顔をしかめてうつむく。
「文句ってわけじゃないです。ただ。」
「ただ、やないわボケ!オレが作ったグループやぞ。言うなればお前等オレの人形や。黙って従っといたらええねん。ええか吉澤。ちなみに日付は例によって半
年後や。そやな、秋の・・・」
「ちょっと待ってください。」
黙って聞いていた吉澤が突然口を開く。はっきりとよく通る声で続ける。
「卒業なんてイヤです。」
- 85 :9 :2004/04/15(木) 00:35
-
途端に水を打ったように静まり返る楽屋。口をぱくぱくさせ、何か言おうとするも、しかし声にならない様子の
つんく♂の荒い息遣いだけが響いている。
娘。たちは口に手を当て、あるいは眉根を寄せ、その様子を心配そうに見守っている。そんな中、吉澤が再びゆっくりと口を開く。
「モーニング娘。をやめるのはオッケーです。でも卒業って言う響きがヤなんです。」
「え?」という声がする。
- 86 :9 :2004/04/15(木) 00:35
-
「・・・どういうことやねん。」
つんく♂がひどく面食らった顔で呟く。もっとも、そこにいた吉澤以外の全員は似たような表情をしている。吉澤一人が涼しげな、しかし強い意志を感じさせる
表情を見せている。
しばらく沈黙が続く。皆は一様に口を半開きにしたまま、吉澤の言葉を待っているらしくつんく♂もそれは同様だ。吉澤はそんな雰囲気を楽しむかのように笑っ
て、口を開く。
「もっとカッコいいのにしてください。脱走とか。」
再び「え?」という声がする。今度は部屋のあちこちから聞こえる。
- 87 :9 :2004/04/15(木) 00:35
-
しばらく場は静まり返る。やがてつんく♂がいかにも理解できないという表情で、頭を振りながら口を開く。
「脱走てお前・・・。」
「ダメですか。じゃあ逃亡とか。」
「逃亡てお前・・・。」
「ダメですか。じゃあ・・・」
口を開きかけた吉澤をさえぎるようにつんく♂が言う。
「じゃあも何もあれへん。お前フザけとったらあかんわ。こっちはマジな話しとんね・・・」
「こっちもマジですよ。」
- 88 :9 :2004/04/15(木) 00:35
-
「・・・よっすぃー。」
「吉澤。」
「わたしも正直言って娘。をやめたくはないです。それはさびしいからとか、そういうこともありますけど、やっぱり自分が娘。に居たんだ、っていう証をまだ
手に入れてないからなんです。だからつんく♂さんお願いします。卒業なんて呼ばれたくないです。わたしだけの。わたしだけに言葉を。」
言葉を切った吉澤の頬はいつのまにか紅潮している。娘。たちは静まり返ってつんく♂の様子をうかがう。それまで首をぐるぐるひねりながら聞いていたつんく
♂の濁った目に、突然輝きが宿る。
「任しとけ吉澤、オレが最高のキャッチフレーズ考えたる。お前の名前、歴史に残したるから。」
それを合図にして部屋には歓声が響く。
「あたし達も頑張ります!」
「あたしも手伝う!」
「そうかお前らも手伝ってくれるか・・・楽しみにしといてくれや、吉澤。」
吉澤は答えずに、ゆっくりと笑いながら頷く。
- 89 :9 :2004/04/15(木) 00:36
-
舞台は事務所の一室。吉澤をのぞく全員が、さきほどと同じようにコの字型のテーブルに座っている。その中央にはホワイトボードが置かれ、そばにはつんく♂
が一人、腕組みをしながら立っている。大きなホワイトボードには既にいくつもの文字が書き付けられている。ブラインドの向こうは闇。つんく♂の足元に置か
れた灰皿、その積みあがった吸殻が時間の経過を示している。
つんく♂が腕組みをしながら、掠れた声でホワイトボードを読み上げる。
「勇退。離脱。脱出。脱皮。中退。脱獄。消滅。・・・違うな。」
誰かが口走る。
「・・・卒園。」
「卒園。」
ホワイトボードに字が書き加えられる。マジックの音だけが響き、そして再び沈黙が訪れる。しばらくしてまた誰かが口走る。
「・・・退学。」
「退学。」
先ほどと同じように、ホワイトボードに字が書き加えられる。全てが淡々とこなされていく。
「・・・脱会。」
「脱会。」
「・・・脱獄。」
「・・・それさっき出たよ・・・」
- 90 :9 :2004/04/15(木) 00:36
-
やがて電気の消えた部屋で娘。たちは机に突っ伏したまま寝てしまっている。上げられたブラインドからわずかに差し込む月明かりがホワイトボードを照らす。
そこにはびっしり文字が書かれていて、何度も消され上から書かれたであろう形跡がわずかに見てとれる。
文字の群れの中、一つだけつけられた赤い丸を見ながらつんく♂が呟く。
「・・・これで決定や。インパクト、オリジナリティ、何もかもこの上ない。卒業に替わる言葉としては、これしかあれへんと言ってもええ。早速ファックス送
らなアカンな。
・・・そや、吉澤に言ったらアカンで。あいつには報道の時にビックリしてもらわなアカンからな。ふぅ。・・・って、みんな寝てもうたか。無理もないもう真
夜中やからな。明日も仕事、あるっちゅうのに・・・でもな、オレは、なんだか久しぶりに大事なことを・・・」
呟きながらつんく♂はふらふらと部屋を出て行く。
- 91 :9 :2004/04/15(木) 00:36
-
朝日が差し込むどこかの居間。夫婦らしき男女とちいさな子供が食卓を囲んでいる。部屋の隅ではテレビ画面が朝のワイドショーを流している。小太りで眼鏡を
かけた男が、すこし苦しそうな表情で喋っている。
「・・・卒業ということで。一面は全てこの記事ですね。こちらもです。吉澤ひとみさん、モーニング娘。を卒業。こちらもですね。吉澤ひとみ、モー娘。を卒
業。ええ、なんでも昨日の夜中につんく♂さんから突然のファックスがあったということで、各紙は・・・」
「ほら、早く食べちゃいなさい。」
女の声がして、退屈そうに画面を見ていた子供が、再び食卓へと目を戻す。夫はやはり退屈そうな顔でスポーツ新聞を眺めている。そこには、こんな文字が大き
く印刷されている。
【吉澤ひとみ、モーニング娘。を卒業】
- 92 :9 :2004/04/15(木) 00:37
-
場面は再び事務所の一室。先ほどと同じ部屋だが、コの字型のテーブルは片付けられている。
娘。たちが見守るなか、頬のげっそりとこけたつんく♂がスポーツ紙を片っ端から無言で引き裂き、膝をつく。部屋にいた全員が、やりきれないと言った顔で引
き裂かれた新聞を、そしてうちひしがれるつんく♂を、眺めている。
「ああ、オレは無力やなあ。所詮オレの力なんてこんなもんやった。」
自嘲的に呟き、顔を伏せる。飯田が言う。
「つんく♂さん・・・つんく♂さんは、いや、ウチ等は精一杯やりましたよ。」
「そうですよつんく♂さん、そんな顔しないでください。」
「つんく♂さん。」
「飯田・・・みんな・・・オレは・・・オレは・・・」
気づけば全員がつんく♂に寄り添うようにして泣いている。つんく♂も泣いている。その様子を眺めながら吉澤がひとり、輪からぽつんと離れた形で嬉しそうに
笑っている。
- 93 :9 :2004/04/15(木) 00:37
-
ボツI 終
- 94 :名無し娘。 :2004/04/15(木) 07:15
-
なんだこりゃ
- 95 :名無し娘。 :2004/04/15(木) 21:40
-
8って誰だろう
- 96 :名無し娘。 :2004/04/15(木) 22:20
-
>95
>80
>「ありがとうごっちんちょっと自信ついたよ」
- 97 :名無し娘。 :2004/04/17(土) 00:57
-
飯田はもういいよ
全部同じに見えてくる
- 98 :10 :2004/04/20(火) 19:55
-
「なんか最近元気ないよね」と私はとりあえず言ってみた。
よっすぃは力なく笑った。
「ああ、ちょっとねえ・・・寝られないんだ」
それは大変な事態だと私は思う。なぜならアイドルは健康がだいじだからだ。それを私はどこかで読んだ。
「あたしでよかったら、聞くけど」
「ありがと」とよっすぃは言った。しかし会話は続かない。
よっすぃは切なそうな顔でうつむくだけ。
- 99 :10 :2004/04/20(火) 19:55
-
「引越しなんてすんじゃなかったよ」とよっすぃは壁に向かってぼやく。暗い部屋で、ぼやく。
「なんで?」
私は部屋を見回す。10畳ほどの寝室にはウォーター・ベッドだけがどすんと置かれていてかなりいい感じだ。
「めちゃくちゃいい部屋だと思うよ、リビングだって綺麗だしさぁ」
「でもさあ、出るんだよね」
「なにが」
「霊が」
- 100 :10 :2004/04/20(火) 19:55
-
よっすぃの目の下にはうっすらクマが出来ている。かなり思いつめた表情だ。
「でもあたしがここに前住んでた時、霊なんてぜんぜん出なかったよ」
と私は言う。なぐさめるような口調で、言う。
「へえ」
「どんな霊が出るの?」
「なんか、前住んでた奴の霊。夜んなると、出るんだ」
「ふふん、なるほど」
私は考えた。私とよっすぃは親友だ。私が明け渡した部屋に、よっすぃが住んじゃうくらいの親友だ。だから私はよっすぃの悩みを解決してあげなくちゃ、いけ
ない。
- 101 :10 :2004/04/20(火) 19:56
-
「とりあえずあたしね、前聞いたんだけど、霊ってのはなんか悔いが残ってると出やすいんだって。その悔いを解決してあげれば、霊、出なくなるかもしれない
よ?」
よっすぃは壁を見つめたままじっとしている。聞いているのか、いないのか、わからない。私は続ける。
「例えばさ、霊はどんなこと言うの?」
「・・・ええと、的外れなアドバイスとか」
「アドバイス?」
私は考えた。アドバイスということは、よっすぃを気遣っているということだと思う。と、すると、あんまり悪い霊じゃあないのかもしれない。
- 102 :10 :2004/04/20(火) 19:56
-
「その霊は、女の子なの?」
よっすぃは呆れたように口を開くと、何かを言いかけて黙った。それから、静かに頷く。
「可愛い?」
私は続いてそう言った。なんとなく胸の辺りがもやもやしてくるのを感じながら。
「可愛いかって・・・なんつっていいんだか」
「いいから答えてよ、可愛いの?」
「しらないよ」
なかなか答えてくれないよっすぃを私は睨みつける。こういうのすごい気に入らない。私は考える。もしかしてよっすぃは何かを隠しているのでは。
- 103 :10 :2004/04/20(火) 19:56
-
「・・・ねえよっすぃ、もしかしてその霊のこと・・・」
「はぁ?」
よっすぃは目をむいて怒鳴るように言う。すごいリアクションが返ってきた。ますます怪しい。こうなったらはっきりさせるべきだ。私は断固決意を固める。
「つーかそんな霊除霊しないとだめだよ!早速除霊しようよ。ねえ。」
- 104 :10 :2004/04/20(火) 19:56
-
よっすぃはとつぜん笑い出した。はははははと暗い部屋に響き渡る笑い声を私はぼうぜんと聞いている。しばらくしてよっすぃはやっと笑い止んで、
「いいよ、面倒くさい」
と言って布団をかぶり、ベッドに寝っ転がってしまった。私はその肩を揺さぶりながら、言う。「ねえ、まだ話終わってないよ、終わってないよ・・・」よっ
すぃは眠たそうな目を開くと、言う。「・・・もう四時か。あと1時間くらいかな、朝日でるまで」
「朝日出るとどうなるって言うの」
「あたしが、ようやくぐっすり眠れるんだ」
よっすぃは柔らかく笑った。
- 105 :10 :2004/04/20(火) 19:56
-
ボツJ 終
- 106 :名無し娘。 :2004/04/20(火)
22:23
- ナイス
- 107 :名無し娘。 :2004/04/21(水)
22:09
- スバラシイ
- 108 :名無し娘。 :2004/04/22(木)
18:14
- とてもきれい
- 109 :名無し娘。 :2004/04/22(木)
22:40
- このスレ以外に書いたことないんですか?
あるなら教えて欲しいんですが
- 110 :名無し娘。 :2004/04/24(土)
12:35
- 大胆にして細心
- 111 :11 :2004/04/26(月) 00:10
-
「影がね、なんかおかしいんだ」
やぐっちゃんの声は深刻だった。
私と圭ちゃん、顔を見合わせて、ひょいと背中のほうから、やぐっちゃんの足元を覗き込んで見たのだけれど、そこには、小さなやぐっちゃんのシルエットが、
夕陽のおかげで大きく、黒々と伸びてるだけで。
「あたしには、普通にしか見えないけど」
と圭ちゃんが呟きます。私も言う。
「あたしにも普通に見えるよ」
- 112 :11 :2004/04/26(月) 00:11
-
やぐっちゃんは難しい顔で頷いた。
「そっか、でもどっか違うんだよなあ」
「おかしいね」
私は首をかしげた。圭ちゃんも首をかしげた。
それからいつまでもやぐっちゃんは、腕組みしたまま、難しい顔でぶつぶつ、影を眺めながら呟いてました。
「何かがおかしいんだよ」
- 113 :11 :2004/04/26(月) 00:11
-
じゃあ、あたしの影と比べてみようか。
なんて言おうと思って気づいた。
「あれえ」
素っ頓狂な声をあげてしまい、やぐっちゃんは驚いて顔をあげた。圭ちゃんもこっちを見ている。私は腕組みをしながら、呟いた。
「影が、ない」
- 114 :11 :2004/04/26(月) 00:11
-
私の足元からは影が伸びていませんでした。並んで立っている、やぐっちゃんの足元からは、すらっとシルエットが伸びてるのに。
「どしたんだろ、一体」
「うぅん、どしたんだ」
すると圭ちゃんも言います。
「ていうかさ、あたしの影もないや」
三人並んで唸ります。こうなるとおかしいのは逆に私たち二人のほう。
- 115 :11 :2004/04/26(月) 00:11
-
「もっと、明るいところに出てみよう」
と言って私たちは、広い場所へと移動しました。右手をブラインドがわりに、眩しい夕陽を遮りながら、見下ろした私と、圭ちゃんの足元にやはり影はなく。
「オイラにはあんのに」
やぐっちゃんの足元には影が。
- 116 :11 :2004/04/26(月) 00:12
-
そこで不意に私は気づいた。
「なぁんだ」と言って私は笑いました。
「真正面から太陽が来てるんだから、ほら、影はこっちだよ」
- 117 :11 :2004/04/26(月) 00:12
-
そう言って振りかえると、確かにすらっと影が伸びています。私のと、やぐっちゃんのと、圭ちゃんのと。
私と圭ちゃん、顔を見合わせて、大笑い。
「あはははははははははははははは」「あははははははははははははははは」「じゃあ、オイラのは一体、なんだよう」「あはははははははははははははははは
は」
- 118 :11 :2004/04/26(月) 00:12
-
ボツL 終
- 119 :12 :2004/04/26(月) 00:13
-
「つーか話聞いてる?」
「ああごめん、クロスワード、やってるんだよ、今」
「へえ」
「わかんなくてさ・・・最初がモで始まってるんだ」
「うん」
「それで、12345・・・8文字だ」
「うん」
「で、最後は・・・め だ」
「うん」
「あと多分だけど2文字目は棒だ」
「棒って」
「あれだよ、あの、伸ばす棒」
「ああ、伸ばす棒」
「そう、伸ばす棒」
「なるほど」
「あと5文字目、5文字目は グ だな」
「結構分かってんじゃん」
「必死で埋めたからな」
「で、問題はどうなってんの」
「それがなぁ、結構長いんだよ」
「言ってみてよ」
「増えたり減ったり分裂したり戻ったり改造されたりばら売りされたり歌ったり踊ったり泣いたり笑ったりするものってなんだ?」
「あー」
「わかるか?」
「うーん、ミジンコ」
「・・・なんでミジンコ?」
- 120 :12 :2004/04/26(月) 00:13
-
ボツM 終
- 121 :13 :2004/04/26(月) 00:19
-
「神様おねがいソロ活動がしたいです」と私はある日星に祈った。そうして部屋に帰ると中澤さんがいた。私はびっくりする。
「なんでこんなところにいるんですか」
「お前の願いかなえに来たんやないか」と中澤さんは言った。中澤さんは、右手に大きなナタを持っていた。
- 122 :13 :2004/04/26(月) 00:19
-
わるい予感がした。
「まさかとは思いますけどー、そのナタで娘。のみんなをみなごろしにして、残ったあたし一人でソロ、なんてオチじゃないですよね」
と私は言った。
「なんや、アカンのかぁ」と中澤さんは首を振る。「したらどんなんがええ?ミキティてきには」
- 123 :13 :2004/04/26(月) 00:19
-
「ていうかあたし的にはやっぱりすっごい名曲を、なんか感動するテーマに基づいて歌って、それで初登場は五位くらいなんだけど二ヵ月後くらいに一位とっ
て、そんであたし感動して泣いちゃう、みたいなのがいいですね」
と私は言った。
「わかった」
と中澤さんは言った。
- 124 :13 :2004/04/26(月) 00:19
-
それからすぐ中澤さんは窓から飛び降りて消えてしまって、ここ三階なのに、とか、何しに来たんだろう、とか、私はぼんやりと色々考えながらベッドに横た
わっている。
もしかするとさっきの中澤さん、ほんとに神様なのかもしれない。ううん、ていうかきっとそうだ。だってあたし誰にも言ってないもん神様に祈ったこと。それ
になんか窓から飛び降りてたし。ふつう死ぬよねこんな高さから飛び降りたら。とか思ってたその時、
いきなりうううううううううううううううううううんってサイレンの音がして私は跳ね起きた。それでカーテン開けて外見たらすごい大騒ぎになっていた。
- 125 :13 :2004/04/26(月) 00:20
-
『中澤裕子飛び降り自殺』
なんて文字がいろんなスポーツ新聞の見出しを埋め尽くして私はもうしらない。とか思ってたんだけど、やっぱり現場が私の家である以上は知らないフリも出来
ずに仕方なく私は、「そう言えば最近悩んでるみたいでした・・・」なんて、会見の席でうつむいてみたりもした。
最初はすごい私のこと、警察の人とかに疑われてたみたいなんだけど、私の迫真の演技が功を奏したらしく、ほとぼりが冷めると今度は逆に私と中澤さんの関係
がクローズアップされるようになった。実は仲良しだった、というのがファンにも事務所にもえらく新鮮だったみたいで、というのは、私が苦し紛れに「よく遊
びに来てました」なんて言ったからだと思うんだけど。
で、その組み合わせはずいぶん意外性があったらしく。
- 126 :13 :2004/04/26(月) 00:20
-
というわけでつんく♂さん曰く「気持ちをこめて歌ったらええ」と渡された曲を私はソロで歌うことになった。表立ってコメントはなかったけどそれが中澤さん
への追悼ソングであることは周知の事実だった。偶然とは言え私は中澤さんに感謝した。
渡された歌はなかなかにいい曲で私はブース席で歌いながら、もしかすると中澤さんはほんとに神様だったのかもしれないな、なんてちらりと思った。私は、気
持ちをこめて歌った。
- 127 :13 :2004/04/26(月) 00:20
-
初登場五位だったその曲は二週目にランキング圏外に落ちた。また変わらない日々がはじまった。私はもうソロがしたいとか誰にも言わなくなったし、考えるこ
ともなくなった。そうして替わりにわきあがってきたのは中澤さんが死んだことに対する悲しみだった。
それは、ほんとに、急にせり上がってきた感じだった。けれど娘。のみんなや他の人たちがさんざん泣いて、悲しんで、やっと悲しみを忘れかけた今になっ
ちゃ、誰にも言えなくて私は時々夜中ひとりで泣いた。星を見ると祈った。
- 128 :13 :2004/04/26(月) 00:21
-
しばらくして梅雨がきた。悲しみはちっとも薄れないどころかどんどん強くなった。その上目の前で自殺された責任なんかもちょっとずつ感じるようになって、
私は梅雨の空に負けないくらいどんより湿った毎日を過ごしていた。
仕事は忙しかった。娘。の新曲が出るというのでレッスンがあったりレコーディングがあったり、歌番組の収録があったりして、それでも虚しさは紛れなかっ
た。発売日はぐんぐん近づいていった。いつもと違って、それに対して緊張感のかけらもなかった。ただただ虚しかった。
- 129 :13 :2004/04/26(月) 00:21
-
そんなある日、私たちは事務所に集まっていた。色々な打ち合わせが交わされていくのを私はぼんやりと眺めていた。と、誰かが言った。
「そう言えば、新曲のランキングが出てるから。」
そして全員に何やらコピー用紙が回された。それを見てみんなは歓声をあげた。私もぼんやりと紙に目を落とした。
娘。の曲は四位くらいだった。そして一位にはあの時出した私の曲がランクインされていた。
- 130 :13 :2004/04/26(月) 00:21
-
はじめ印刷ミスかと思った。「すごいじゃん」とか「良かったねぇ」って声がして私に言ってるんだって最初わからなかった。私は笑うでもなく喋るでもなくた
だぼーっとみんなを眺めていた。みんなすごい嬉しそうだった。矢口さんとかめちゃくちゃ喜んでいた。胸の、奥の方から、何かがこみあげてくるのを感じた。
「なんで今更一位になったんですかねえ」と私は照れ隠しに呟いた。
矢口さんが、笑いすぎて眼に溜まったんだろう涙を、拭いながら教えてくれた。
「きっとファンのみんなが買ったんだよ。だって、ほら、こないだの土曜ってさ──」
- 131 :13 :2004/04/26(月) 00:21
-
そんであたし感動して泣いた。
- 132 :13 :2004/04/26(月) 00:21
-
ボツN 終
- 133 :名無し娘。 :2004/04/26(月)
12:48
- 11 ワカラン
12 ワロタ
13 イイ!
- 134 :名無し娘。 :2004/04/26(月)
19:26
- 最後の一行がいいね。
- 135 :名無し娘。 :2004/04/26(月)
20:28
- 11 矢口の影は反対方向にも伸びてる
っていうことだと思う
- 136 :14 :2004/04/27(火) 23:58
-
「ふふ、綺麗なバラ・・・」
「あ、道重、どしたのそれ?」
「ほら、見てみてくださいよ飯田さん、綺麗なバラにはトゲがあるって。このバラ、こんな鋭いの」
「ほんとだ・・・すごいトゲ・・・痛っ」
- 137 :14 :2004/04/27(火) 23:58
-
「あれ、バラが一本増えてるよ」
「ほんとですか?気づかなかった」
「あたしもー」
「さっきは確かに・・・、一本しかなかった気がするけど。飯田さんに聞いてみよう。飯田さーん」
「あれ・・・いないみたいだねぇ」
「何やってんだろ、もうすぐ本番なのに・・・ちょっとあたし探してくるよ」
「あ、行ってらっしゃい・・・ねえ、ウチ等も探しにいこうか?田中?」
「ん・・・それにしても・・・綺麗なバラですね、それにすごいトゲ」
「あれ、田中?」
- 138 :14 :2004/04/27(火) 23:59
-
「あれ、バラが置いてあるよ」
「ほんとだー、綺麗なバラ」
「そしてなぜか誰もいない・・・梨華ちゃんとかどこ行ったんだろう」
「藤本さんさっき廊下ですれ違ったよ、なんか飯田さん探してたみたいだけど」
「まこっちゃん何やってんの?」
「いや、ちょっとバラを咥えてみようかな、と思って」
「・・・なんでもいいけど、トゲ、気をつけなよ」
「折っちゃったら怒られるかな」
「へーきだよ、四本もある」
「痛て。トゲ刺さった」
「だから言ったじゃ・・・ん?」
- 139 :14 :2004/04/27(火) 23:59
-
「みきちゃん大変、まこっちゃんが消えた。こつぜんと」
「何フザけてんの」
「フザけてるとかじゃなくて」
「そんなことより辻ちゃん、飯田さん見なかった?」
「いや、見てないけど」
「・・・本番まであと30分か。よし、手分けして探そう」
「えー」
「辻ちゃんはあっち。で、他のひとは・・・って、なんで二人しかいないの?」
「だからまこっちゃんが消えたんだってば」
「・・・ちょっと待って、バラ、めちゃめちゃ増えてない?」
「んー、いちにいさん、・・・五本?あれれ?さっきは確か」
「誰か持ってきた?」
「みてないけど」
「ちょっと調べてみる必要ありそう」
「調べるって」
「なんか怪しいよ、このバラ」
「うーん・・・普通のバラに見えるけどなあ、綺麗なだけで」
「どれどれ・・・痛っ」
「あー、トゲ気をつけないと・・・って、ののも刺さっちった」
- 140 :14 :2004/04/27(火) 23:59
-
「わあ、バラがこんなに。」
- 141 :14 :2004/04/28(水) 00:00
-
ボツO 終
- 142 :名無し娘。 :2004/05/01(土) 01:38
-
( ‘д‘)ノ<ブロ、ワルサーあるで
- 143 :名無し娘。 :2004/05/03(月)
15:48
- かつて読んだどのボツ小説よりもボツ小説らしいボツ小説だ。
- 144 :名無し娘。 :2004/05/07(金)
16:45
- 書けそうで書けない味だ
- 145 :名無し娘。 :2004/05/16(日)
07:53
- >>142
南の診療に赤、さっき保田を東で漁ってるのを見た。武器はセクビ、漁りたい。
- 146 :15 :2004/05/21(金) 22:32
-
石川 突然ですが問題です。この楽屋のどこかに、ヤグチさんが隠れています。
吉澤 さて、ドコでしょう。
飯田 へ?
藤本 …っていうか、ありえないよね。
- 147 :15 :2004/05/21(金) 22:32
-
吉澤 ありえない、なんてことはないです。
石川 隅々まで探しましょう。
亀井 ロッカーの中…いませーん。
田中 テーブルの下もいないよ。
道重 カーテンの奥もいませんでした。
加護 …いるわけないじゃん。こんな狭い部屋に。
辻 かくれるトコなんてもうないじゃん。
新垣 石川さん、吉澤さんも、あんまり適当なこと言わないで下さい。
- 148 :15 :2004/05/21(金) 22:33
-
吉澤 はい、全員ブー。
石川 正解は鏡の中でした。
紺野 何を言ってるんですか。
小川 鏡?
吉澤 じゃあリカちゃん、ヤグチさんを呼んでくださーい。
石川 はーい。
- 149 :15 :2004/05/21(金) 22:33
-
石川、馬鹿でかいハンマーを取り出して、鏡に向かって振り下ろす。
がしゃん。
飯田 うわっ。
藤本 なんてことを。
割れた鏡の奥から、矢口の死体が転がり落ちてくる。
- 150 :15 :2004/05/21(金) 22:33
-
石川 と、言うわけでしたー。
吉澤 ちょっと難しかったかな?
辻 こんなのわかるわけねーだろ。
藤本 インチキだよね。
石川 インチキだなんて。
加護 かえれー。
全員 かえれー。
吉澤 一生懸命考えたのに。
石川 ぐすっ。
警官 殺人と死体遺棄の現行犯で逮捕する。
- 151 :15 :2004/05/21(金) 22:34
-
がつん。
警官、ゆっくりと倒れる。
後ろで飯田がさっきのハンマーを持って立っている。
飯田 ふー、あぶなかった。
石川 助かりました!
吉澤 さすがリーダー。
藤本 でもさー、この人どうすんの?
石川 ん、いいこと考えた。
吉澤 ふふ、じゃあみなさん、10分だけ出て行ってください。
加護 また?
石川 今度はすごいよ、すっごい隠し場所見つけたんだから!
飯田 しょうがないなー。
- 152 :15 :2004/05/21(金) 22:34
-
石川と吉澤をのぞく全員、嬉しそうに出て行く。
残った二人は目をキラキラさせて言い合う。
吉澤 床下?
石川 天井裏!
- 153 :15 :2004/05/21(金) 22:34
-
ボツP 終
- 154 :16 :2004/05/21(金) 22:36
-
「なんか、つんくさんがめちゃくちゃいい歌つくってました」
「マジで?」
「なんか、昨日事務所で、あのエライ人とか集まる部屋あるじゃないですか」
「あ、三階の会議室?」
「そう、で、偶然前通ったら、テープがかかってて」
「ふぅん」
「スゴイんですよ、もうあたしうっとりしちゃって」
「そんなにいい歌だったんだ」
「その後の会議も大盛り上がりでしたよ。これは売れる!とか、最高だ!って感じで」
「へえ、すごいね、ウチ等の歌かなあ」
「そこまでは聞いてませんでしたけど、でももしあの曲もらったらミリオン行くかも」
「マジで?ていうか一回聞いただけでそこまでわかるの?」
「はい。ていうか一回聞いただけなのに、未だに耳から離れない」
「すごい・・・そこまで言うなら、リカちゃんちょっと歌ってみてよ」
「いいですよ。ふー、ふふふー、ふふー、ふふふふふふー」
「・・・」
「どうでした?」
「どうでした?って言うか・・・とりあえずミリオンは行かないっぽい」
「またそうやって・・・あ、あたしが歌ったからいい歌に聞こえない、って言うんでしょ?」
「違うけど・・・まあ、そう言うことかな」
- 155 :16 :2004/05/21(金) 22:36
-
ボツQ 終
- 156 :17 :2004/05/21(金) 22:39
-
リカちゃんと家で料理つくって食べる約束だったので、私、台所にいるんだけど、フライパンとかいろいろ久しぶりに取り出して洗ってたら、ナベのフタがぶっ
壊れてることに気づいた。
『今駅ついた。あと10分くらいで着きます。何か買ってくるものあったら言ってね』
というリカちゃんからのメールに、私はカチカチと返事をかえす。
『ナベブタ買ってきて。なんでもいいから。』
- 157 :17 :2004/05/21(金) 22:39
-
20分くらいしてチャイムが鳴る。ドアを開けるとブタを小脇に抱えたリカちゃんが汗まみれの顔で笑っている。
「あー重かったァ」
そう言ってブタを床に下ろす。ブタはよちよちと部屋の隅へ走っていく。私はそれを目だけで追う。
「忘れてた、リカちゃんはバカだったよね。」
「なにが?」
- 158 :17 :2004/05/21(金) 22:39
-
ブタはやっと落ち着いたらしく、部屋の隅っこで大人しくうずくまっている。よく見るとその背中にはナベが括り付けられていて野菜なんかがたくさん入ってい
る。
「なるほどナベが括り付けられてるからナベブタなんだね。なっとく。」
私はわざとはっきりした声で言う。リカちゃんは嬉しそうに笑う。
「かわいいよね。」
「うん」
にこにことブタを眺めるリカちゃんは私のシラけた視線に気づかない。私はため息をつく。気づいたところでどうにもならないだろう。まあ、野菜とナベつきの
ブタ。悪くは無い。私は包丁を手にとって振り返る。
「とりあえず食っちゃおうよこのブタ」
- 159 :17 :2004/05/21(金) 22:40
-
ブタはびくっと顔をあげる。リカちゃんもさらにびくっと顔をあげる。口をとがらせてまくしたてる。
「何なの何よそれ、そんなオニみたいなことあたし絶対はんたい。」
「はぁ?じゃあなんのつもりで買ってきたんだよこんなブタ。あたしはナベのフタ買って来いっつったんだよ」
「ちがうよちがうよヨッスィナベブタって言ったよ?ほら、メール、ほらほら」
「たしかにナベブタってあるけどナベブタっつってブタ買ってくる奴がドコにいんだよ!」
怒りを堪えきれずに私はリカちゃんの顎を掴む。
「は、離してよぅ」とか言いながらリカちゃんはちょっと嬉しそうでそれがまたむかつく。
- 160 :17 :2004/05/21(金) 22:40
-
そんな私たちを途中までは不安そうに眺めていたブタだったけど、私が顎を掴むために包丁を置いたせいか、気づくと安心したようにまた、部屋の隅でだらしな
くうずくまっている。ふいに何もかもバカバカしくなる。私はため息をついて顎から手を離す。
「とりあえずナベはもういいや、何しようか」
呟きながら私は冷蔵庫を開ける。リカちゃんも背中から「うーん、どうしよう」なんて言う。ブタはそのすぐ後ろで「ぶいぶい」と鼻を鳴らしている。
「・・・って、いつの間に。」
「きっとお腹空いてるんだよ。」
リカちゃんはいとおしそうにブタの耳あたりをさする。なんか気に入らない。
- 161 :17 :2004/05/21(金) 22:40
-
「これ食べるかな。」
ごそごそとリカちゃんが差し出したのは捨てようと思ってた余り物の野菜炒めだった。
「どうだろ・・・つーかそれ傷んでるっぽいけど」
「ほら、お食べ?」
ちょっと嬉しそうにリカちゃんはサランラップを取った。
瞬間、たぶん0.7秒くらい、ブタはありえない勢いでそれを平らげた。
- 162 :17 :2004/05/21(金) 22:40
-
食べ終わったブタは顔をあげると「ぶい」と言う。
私とリカちゃんは顔を見合わせる。リカちゃんの目は輝いていた。きっと私の目も同じくらいキラキラしていただろう。
「すっげえええ!」
「フードファイターだ、フードファイターだよ」
「見た?見た?今のスピード。一秒かかってねーよ、まじカッケーよこいつ」
「あ、これも食べるかな・・・?あ!」
「うぉ、早ぇ!」
「すごい!これも!これも!」
「これなんて生だけど!」
「これも!明らかにもう腐ってるけど!」
「これはどうだ!」
- 163 :17 :2004/05/21(金) 22:40
-
1時間くらいしてブタは満足げに部屋の隅っこでうずくまっている。
私は空っぽの冷蔵庫の前で、リカちゃんの顎をつかんでいる。
「どうすんだよ。食うもん無くなっちゃったじゃんか。」
「ヨッスィが調子乗って食べさせるからだよ。」
「自分だって。」
私たちはお互いを責める。けれどお腹が空いては喧嘩も出来やしない。
「やっぱブタ食おうよ・・・」
「ダメだよ・・・」
なんて言いながらもうベッドでぐったりしてる。大切な時間はこんな風に過ぎていく。
- 164 :17 :2004/05/21(金) 22:41
-
そして気づくと朝になっている。
私は体を起こす。
一人きりだ。目を擦る。いくら擦ってもリカちゃんもいないしナベブタもいない。
そしてテーブルにはなにやら。
「・・・うまそうな、におい」
- 165 :17 :2004/05/21(金) 22:41
-
テーブルの上には大盛りのナベ。豚汁みたいな感じのものが湯気を立てている。やたら食欲をそそる匂い。
私はふたたび目を擦る。擦りながら、呟く。
「・・・材料どこあったんだ、一体」
その時トイレからごそごそという気配を感じる。とするとリカちゃんはいる。しかしブタは。いっぺんに目がさめるのを感じる。
- 166 :17 :2004/05/21(金) 22:41
-
思い出すのはあの、ブタに括り付けられていたナベ。そして野菜。そしてゆうべ無くなったはずの肉。そしてここにある肉。いなくなった、ブタ。
私はふたたびナベに目をやる。
ナベの隣に置かれたちいさなメモが目に入る。手紙だ。
それは小学生が左手で書いたような字で。
「おせわになりました ナベブタです ゆうべのごおんはいっしょうわすれません せめてものおんがえしとして わたしの いちばんとくいな りょうりで
おんがえしさせて もらおうとおもいます いっしょうけんめい つくりました おいしいと いいです おいしいと いってくれれば いちばん しあわせで
す ナベブタより」
- 167 :17 :2004/05/21(金) 22:41
-
私は泣いた。
泣きながら汁をすくって飲んで肉を頬張った。
それは今までにない味だった。今まで食べたことのない味だった。おいしいとかまずいとか、私にとってはそういう問題じゃなかったけれど、私は一口ごとに
「おいしい」と、しつこいくらいに言いながら食べた。
もう夢中だった。
- 168 :17 :2004/05/21(金) 22:41
-
けれど半分くらい食べ終わったところでトイレから流す音が聞こえて、私はやっと正気にかえった。リカちゃんは私が起きるまで取っといてくれたんだから、一
人で全部食べるわけにはいかないな、と思った。
「これ、おいしいよ、一緒に食べよう」
私が涙声でそう呼びかけると、半分くらい開いたトイレのドアから、ナベブタが照れくさそうに顔を出す。
- 169 :17 :2004/05/21(金) 22:42
-
ボツR 終
- 170 :名無し娘。 :2004/05/21(金)
22:56
- うっわぁ
- 171 :名無し娘。 :2004/05/22(土)
02:09
- うあぁ、後味悪ぅ。
なのに読み返しちまった。うぁぁ。
カチカチ山思い出したよ。
- 172 :名無し娘。 :2004/05/22(土)
04:54
- 俺は弟切草のバッドエンディング思い出した。
自分の彼女は焼け死んで、
間違えて助け出したのは狂った双子の姉の方だったっていう…
- 173 :名無し娘。 :2004/05/23(日)
03:42
- 凄いとしか表現できないのが悲しい
- 174 :名無し娘。 :2004/05/23(日)
04:17
- 神
- 175 :名無し娘。 :2004/05/25(火)
23:59
- うわぁ、まじですげぇ。。。
- 176 :18 :2004/06/06(日) 23:46
-
楽屋にゴマキ人形が落ちていた。
「へんな人形。ごっちんそっくり。」
楽屋に一人きり、辻が退屈しのぎに人形の鼻を掴むと、それはまるで生き物のようにむくむく動き出す。
「ハナヲツカマナイデクダサイ。ハナヲ。」
「うわあ。ごっちんの声だ。」
辻は目を丸くする。
「イイカラアヤマリナサイ。」
「わ、ほんとにごっちんみてえ。もっと喋ってよ。もっと。」
辻は嬉しそうに笑う。ゴマキ人形は頭をかく。そして言う。
「ツジ、アヤマレ。」
「うわあ。」
辻は一向に謝らない。ゴマキ人形もそれでいいみたいな風で。
- 177 :18 :2004/06/06(日) 23:47
-
楽屋にゴマキ人形が落ちていた。
「あれ、ごっちんの人形。」
楽屋に一人きり、人形を拾い上げながら、なっちが言う。
「見ればみるほどそっくり。」
言いながら、乱暴に人形を揺する。手を引っ張って見たりする。なっちは笑顔を崩さない。
「ばーかばーかばーか。ねえごっちん、聞こえてる?」
「最近大変なんだよ、ドラマとかさ。歌も一人っきりだしさ。」
人形を相手に、一人喋りつづけるなっち。
時折頭をふんわり撫でられて、ゴマキ人形は心地よさそうに膝でじっとしている。
- 178 :18 :2004/06/06(日) 23:47
-
楽屋にゴマキ人形が落ちていた。
「何これ、ごっちんの人形じゃん。」
そう言って飯田が人形を拾い上げる。
「床に置いとくなんてヒドイね。カオが飾っといてあげるからね。」
言いながら、飯田は優しくゴマキ人形のホコリを払う。すると突然人形は口をぱくっと開く。
「アナタハイイヒトデス、ネガイヲヒトツ、カナエテアゲマス」
飯田は笑って答える。
「じゃあごっちん娘。に戻ってきてよ、何人も抜けちゃうから不安なんだよ」
ゴマキ人形はその途端にくたっとなって、それは何回ゆすぶってももうただのぬいぐるみに過ぎなかった。
- 179 :18 :2004/06/06(日) 23:47
-
ボツS 終
- 180 :名無し娘。 :2004/06/10(木)
21:24
- 悪くない。
いや
素晴らしい。
- 181 :19 :2004/06/27(日) 01:42
-
ある日。
ほんのイタズラのつもりで楽屋の電気を消したら飯田さんだけがぼわっと白く浮かび上がった。
私は泣いた。
「いいださんはオバケだったんですね」
「違うよ道重、実はカオリは牛乳で出来てるんだよ」
- 182 :19 :2004/06/27(日) 01:42
-
なるほど白いえのぐで書いた絵のように綺麗な飯田さんが「牛乳で出来てるんだよ。」なんてもっともらしい顔で言うとそれはそれっぽく聞こえるのだ。私は泣
き止む。
「じゃあいいださんは冷やしておかないといけないんですね」
「違うよ道重、カオリはロングライフ牛乳で出来てるんだ」
- 183 :19 :2004/06/27(日) 01:42
-
とすると冷蔵庫に入れておかなくても飯田さんが腐る、ということはないのだ。私は少しつまらなく思う。まっしろな飯田さんが腐っていくさまはさぞかし儚く
綺麗なことだろうに、という思いが私を掴んで離れない。
「だからいいださんは北海道出身なんですね」
「それとこれとは関係ないよ道重」
- 184 :19 :2004/06/27(日) 01:42
-
ある日。
ほんの冗談のつもりで石川さんの肩に噛み付いたらぽろっと肉が取れた。
私は泣いた。
「いしかわさんは妖怪だったんですね」
「違うよ道重、実はわたしチョコレートで出来てるんだよ」
- 185 :19 :2004/06/27(日) 01:43
-
なるほど言われてみれば確かに、口の中に広がるあまあい香りはチョコレートのものだった。私は泣き止む。
「じゃあいしかわさんは冷やしておかないといけないんですね」
「違うよ道重、わたしガーナ産だから溶けにくいんだ」
- 186 :19 :2004/06/27(日) 01:43
-
とすると火でもつけない限り石川さんが溶けてなくなる、ということはないのだ。私は少しつまらなく思う。溶けかけたチョコレートを慌てて頬張るのが案外好
きなのだ。
「だからいしかわさんは色がくろいんですね」
「それとこれとは関係ないよ道重」
- 187 :19 :2004/06/27(日) 01:43
-
さてそんなある日牛乳とチョコレートが脱退することが発表された。
なんだか胸がむかむかするような落ち着かない感じ。
ガマンが出来ない。楽屋で、三人だけになるのを見計らってから、私は二人に言う。
「どうしても辞めるんですか」
二人は答えずに笑っている。私のむかむかはどんどん強くなってばっくんばっくん胸を内側から打ち付ける。それは鼓動のようで衝動のような抑えきれない感情
だった。
「まーしょうがないよねー」
「ずいぶん先の話だし・・・それに、道重もすぐに慣れるよ」
その味気ない感じがとても嫌だ。私は必死で耐えたがこみあげてくるものを抑えきる事が出来ない。痛みが辛いのではなくてこの痛みに終わりがないと思うこと
が、とにかく辛いのだ。だから泣きながら
- 188 :19 :2004/06/27(日) 01:44
-
私は楽屋で一人ミルク・チョコレートを頬張る。
矢口さんが入ってきたので私は笑いながら言う。
「ねえ矢口さん知ってましたか、ガーナ産チョコレートはミルクとの相性がバッチリなんですよ!」
矢口さんは私の手元を見て、それから少しつまらなそうに笑った。
「知ってた。」
- 189 :19 :2004/06/27(日) 01:44
-
ボツT 終
- 190 :20 :2004/06/27(日) 01:44
-
つんく♂が一升瓶を片手に楽屋に入ってくる。
濁った目でわめくように言う。
「なあお前ら、娘。が5人になるとしたらどういうメンバーがええと思う?」
やばい本気だ、と矢口は直感する。
- 191 :20 :2004/06/27(日) 01:45
-
飯田が悲しげに視線を伏せる。
石川が何か言いたそうな素振りをみせる。
吉澤がとっさに石川の口を後ろからふさぐ。
高橋はぽかんと口をあけている。
紺野は横目でみんなの様子をうかがっている。
新垣が難しそうな顔で首をかしげる。
田中はすでにちょっと泣きそうだ。
道重は悩んだフリして鏡を見ている。
亀井は汚いモノを見る目でつんく♂を見ている。
そして藤本が嬉しそうに手を挙げて言う。
「あたしが5人いればいいと思います。」
- 192 :20 :2004/06/27(日) 01:45
-
「いい案だと思ったんだけどなあ。」
グーでぶたれて、赤くはれたおでこをさすりながら藤本がぼやく。
つんく♂が出て行ったドアを、そっと閉めながら、矢口が嬉しそうに言う。
「いや、最高の案だったよ。」
- 193 :20 :2004/06/27(日) 01:45
-
ボツU 終
- 194 :21 :2004/06/27(日) 01:46
-
瀕死の重傷を負ったカゴちゃんが言う。
「ああごっちんもうあたし助かんないよ、自分でわかるんだ・・・今までありがと・・・」
私はその手を握りながら答える。
「そんなことないよ、ほら、今救急車くるから!」
カゴちゃんは弱弱しくうなずく。
カゴちゃんは私の可愛い後輩であり弟子であり仲間であり親友だ。私は泣きそうになるのをぐっと堪える。
- 195 :21 :2004/06/27(日) 01:46
-
「あたし天国行くんだ・・・でも・・・天国行く前に・・・うなぎ・・・」
とカゴちゃんは呟く。
「何、うなぎ?うなぎが食べたいの?ねえ、うなぎが?」
私は焦ってなんども聞き返す。カゴちゃんはすっと無表情になり、ふかく息を吸い込むと、喋りだす。
- 196 :21 :2004/06/27(日) 01:46
-
「ああ天国行く前に一度でいいからごっちんが生きたままのうなぎを、あたしのために買って来て、料理しようとするんだけど手からすっぽ抜けちゃって、捕ま
えようとするとまたすっぽ抜けて、そのまま延々とうなぎと格闘するところが見たかったなあ。」
- 197 :21 :2004/06/27(日) 01:47
-
というわけで私は走っている。一番近くの魚屋が待ち構えたように笑う。
「ほら姉ちゃん、イキのいいうなぎだ、持ってきな」
私はバケツごとそれを受け取る。受け取りながら代金を払って踵を返す。そして部屋に戻るとカゴちゃんはもう虫の息だ。どうやら救急車はまだ来ていないよう
だった。
「今すぐ作るからね待っててね!」
言いながら私は献立を考える。とりあえずカバヤキだ。私はバケツからうなぎを取り出そうとする。視界の隅でカゴちゃんの目がきらりと光ったように見える。
気のせいだったかもしれない。
- 198 :21 :2004/06/27(日) 01:47
-
水を離れ私の手のなかに入るのを、待ち構えていたかのようにうなぎは暴れだす。そしてつるっと手から抜けていく。焦って私はそれを掴む。うなぎはまたつ
るっと抜ける。私はそれを掴む。うなぎはさらにつるっと滑ってそこはもう窓の外だ。私はひたすらに追いかける。うなぎはどんどん上へ上へと、私もどんどん
上へ上へと。
- 199 :21 :2004/06/27(日) 01:47
-
気づけば雲が遥か下に見える。うなぎはさらに昇りつづける。私もさらに昇りつづける。カゴちゃんが笑いながら言う。
「頑張ってね、もうすぐ着くからね」
私はようやくだまされたことに気づく。カゴちゃんはふわふわ浮きながら、ごめんねという感じで手を立てる。そして言う。
「着いたら、一緒にカバヤキ食べようね」
- 200 :21 :2004/06/27(日) 01:48
-
ボツV 終
- 201 :名無し娘。 :2004/06/27(日)
08:53
- 凄いな。脱帽する。
- 202 :名無し娘。 :2004/06/27(日)
11:30
- 久しぶりのこの感覚。たまりません
- 203 :名無し娘。 :2004/06/28(月)
04:33
- やばい過去最高にいい、もう超やばい
- 204 :22 :2004/07/11(日) 02:12
-
「なんか聞いたんですけど・・・モーニング娘。の七不思議ってあるんですよね?」
一体誰に聞いたのか、目をキラキラさせて田中がそんなことを言う。
「あるけど・・・聞いたってつまんないよ?」
私は渋る。しかし田中はしつっこく食い下がってくる。
「教えてください!矢口さん!教えて!」
とても引き下がりそうにない様子だった。バカバカしかったが、しかしよく考えてみると私もかつては裕ちゃんとかに、目をキラキラさせて食い下がった身だ。
しぶしぶ口を開く。
- 205 :22 :2004/07/11(日) 02:13
-
「一つ。12時過ぎてから最後に帰ろうとすると、1/32の確率で楽屋のドアが開かない。」
田中が「は?」という顔になった。私は構わず続ける。
「一つ。コンサート中にマイクを落とすと、1/32の確率で靴ヒモが切れる。」
- 206 :22 :2004/07/11(日) 02:13
-
「・・・その、さんじゅうにぶんのいち、ってなんなんですか。」
私は無視して続ける。
「一つ。衣装を汚したり破いたりすると、1/32の確率で口内炎が出来る。一つ。遅刻した時に・・・」
田中はすっかり呆れ顔だ。私が初めて聞いた時のように。
- 207 :22 :2004/07/11(日) 02:13
-
「・・・1/32で目覚まし時計が壊れる。あと二つか。ええと・・・」
「もういいです。」
話の途中だったが、白けきった目つきで田中が腰を上げる。無理もない。まあ、どっちにしろ、そろそろ話を切り上げるつもりだった。いい加減夜も遅いのだ。
「じゃあ車来てるみたいなんで・・・あたし、お先に失礼します。」
田中がそう言って出て行くと、楽屋には私一人が残された。忘れ物がないか確認して、私もゆっくりと立ち上がる。ドアに手をかける。開かない。
- 208 :22 :2004/07/11(日) 02:13
-
あれ。と思い時計を見る。12時を3分ほど過ぎていた。
「あ、1/32」
呟いて私はくすっと笑った。それからもう一度ノブをひねり、楽屋を後にする。
- 209 :22 :2004/07/11(日) 02:14
-
ボツW 終
- 210 :23 :2004/07/11(日) 02:15
-
ひたすらに暑かった。汗まみれになりながら石川が言う。
「・・・ロケ、なかなか終わらないですね」
私は答えずに、袖口で額の汗をぬぐう。そして少し離れた収録現場に視線をやる。監督さんがまた立ち上がって、大声を張り上げている。
「NG!NGだ!」
うんざりした顔で石川はうつむく。どうやら、私の出番はまだまだ来ないようだ。そして石川の出番も。
- 211 :23 :2004/07/11(日) 02:15
-
待つのは苦じゃないがとにかく暑いのだ。私たちは山でロケをしていた。本来、待ち時間は涼しい車の中で過ごしたり、まあ、なんかしらの冷房あるんだけど、
今日に限って言えば「冷房は全てぶっ壊れて」いた。
というわけで今、私と石川が待機している場所は崖のふちだった。崖、ってほどでもないかもしれないけど、まあ10メートルくらいの高さはあった。
そしてその下には川が流れているのだ。さらさらと涼しげな川の流れを眺めながらちょっとでも涼もう、という苦肉の策だった。
- 212 :23 :2004/07/11(日) 02:15
-
「イイダさん、今まで黙っててすいません。実はあたし魚だったんです。」
川をぼんやり見つめていた石川が、ふいにそんなことを言う。
「あんた、暑さでおかしくなったんじゃ」
冗談のつもりで私は答える。茶化すみたいな口調で。
「おかしくもなりますよ、だってあたし魚なんですもの」
けれど石川は真剣だった。
- 213 :23 :2004/07/11(日) 02:15
-
ちらっと「もしかしたら、石川まじで狂ったんじゃ?」と私は頭の片隅で思った。
それくらい暑かった。その時視界の隅でふたたび監督が立ち上がる。
「違うっつってんだろ!もう一回!もう一回だ!」
横顔に目をこらすと、いや、目をこらさなくても汗だくだった。見てるだけで暑っ苦しい。その時どこか遠くの方で「ざぶん」という音がした。
振り返ると石川の姿がない。
- 214 :23 :2004/07/11(日) 02:16
-
ああ、飛び込んだんだな、と私は思った。そして顔を上げて、照りつける太陽を見ながらふふっと笑う。ムリもない、この暑さじゃ。
とは言え、今はれっきとした収録の最中なのだ。私はゆっくりとマネージャーの方へ向かう。うつろに私を見かえすマネージャーも汗だくだ。服から、前髪か
ら、顔から、汗びっしょり。とにかく暑いのだ。私は言う。
「マネージャー大変です。石川が川に飛び込みました。」
「なんだって?」
収録は中断された。大騒ぎになった。
- 215 :23 :2004/07/11(日) 02:16
-
私は説明をした。これこれこう言うわけで、石川が実は魚だったこと。気づいたら飛び込んでたこと。けれどやっぱりみんな暑さにおかしくなってるらしくて、
誰も石川を捕まえにいこうとはせずに、崖から川を眺めては「おーい」とか言うだけ。あげくの果てには救助隊を呼ぼう、とか言いだす始末で。
なぜこんな簡単なことがわからないのだろう?みんなやっぱり、暑さにやられているのだ。私は笑いながら口を開く。
「いいですか、石川は『実はあたし魚だったんです』って言ったんですよ」
みんながうつろな目で私を振り返る。私はすこし得意げに続ける。
「だったら、こっちは鳥になればいいじゃないですか?」
言いながら私は地面を蹴って翼を広げた。
- 216 :23 :2004/07/11(日) 02:16
-
飛びながら私は水面に目を凝らす。暑さにやられてしまった石川を探して。水面はぐんぐんと近づいてくる。水は限りなくすきとおっていて視界はとてもクリア
だ。けれど石川はなかなか見つからない。風を切って私は飛びつづける。
向かい風がとても心地よくてさっきまでの暑さが嘘のよう。水面はキラキラと太陽の光を反射して、抜けるような青空との間、まるでまっさおなプリズムの中に
居るようだどこか、遠くのほうで「ざぶん」という音が聞こえた気がした私は飛びつづける永遠に続く青の中を魚になってしまった石川を探して。
けれど石川はどこにも居ない。
- 217 :23 :2004/07/11(日) 02:16
-
ボツX 終
- 218 :名無し娘。 :2004/07/11(日)
07:52
- そんなのありですか
- 219 :24 :2004/07/11(日) 16:31
-
亀井が悩んでいる。
「なんかあたしだけ人気ないんじゃないでしょうか。」
みんなはうんうんと頷く。そういうきもちは誰にでもあった。
そこへ加護が入ってきて言う。
「そんなのみんないっしょだよ。」
しかし「悩みのない加護さんにはわからないんです。」と亀井は取り付くしまもない。
そこで加護が言う。
「じゃあ加護ちゃんになってみよう。はい、加護ちゃんスーツ」
- 220 :24 :2004/07/11(日) 16:31
-
加護ちゃんスーツの仕組みはわからないが、そのスーツを着た亀井は加護そっくりになった。
「すごい・・・加護さんそっくり」
「でしょー。しばらくそれで過ごしてみなよ。その間あたし亀井ちゃんスーツ着ててあげるからさ。」
亀井は嬉しそうに「ありがとうございました!」と何度もいい、いつの間にか声まで加護そっくり。
- 221 :24 :2004/07/11(日) 16:31
-
一週間ほどして、亀井が言う。
「加護さん、すごいですこのスーツ。なんだかあたし芯から加護さんになった気持ちで。」
「でしょう。すごいでしょう。」と加護も嬉しそうに笑う。
「で、悩みは解決したの?」
「はい。加護さんには加護さんなりの悩みがやっぱりありました。言わないけど。」
「うん。言わないでね。」
と加護は笑いながら言う。
- 222 :24 :2004/07/11(日) 16:32
-
「じゃあ、そろそろあたし亀井に戻ろうと思います。」と言って亀井は背中を向ける。
「ファスナー、自分じゃ届かなくて。下ろしてください。」
加護はその背中に歩み寄る。そしてファスナーに手をかける。なにやらごそごそしてたかと思うと、急に大笑いをはじめる。
「アハハハ、ファスナー、壊れちゃったよ。」
- 223 :24 :2004/07/11(日) 16:32
-
亀井は泣き笑いのような顔で「それじゃ困るんです。」と言う。
加護はマジなのか冗談なのかわからない顔で「ファスナー壊れちゃった。アハハハ。亀井ちゃん脱退しなくちゃね。」と言う。
黙ってみていた辻がぼそっと言う。
「ああ、いいな。」
- 224 :24 :2004/07/11(日) 16:32
-
ボツY 終
- 225 :25 :2004/07/11(日) 16:32
-
「ののはあと一ヶ月の命なんだよ」
と加護ちゃんが言った。私はなんのことやらわからず「へえ」と頷いてみせた。辻ちゃんもニコニコ笑って、
「だからメロンとか食べさせてあげた方がいいよ」
と言う。
私は笑ってその頭をはたく。
- 226 :25 :2004/07/11(日) 16:33
-
その夜、私は圭ちゃんに電話をする。
「こんなこと言うんだよ、加護がさあ」
「ああ、あんたからかわれてんだよ」
圭ちゃんは笑う。私も笑うべきなのだろうが、とは言えその何気ないやりとりが私に、いっぷう変わった印象を残したのも事実だった。電話を切ってからも、一
人のベッドで私は考える。冗談にマジになるなんてバカバカしい。でも、もしマジだったらどうしよう。
- 227 :25 :2004/07/11(日) 16:33
-
メロンどころじゃ済まない。いたたまれなくなって私は、辻ちゃんに電話をかける。
「もしもしごっちんどしたの」
元気な声だ。私は言う。
「お昼の話なんだけどさー、あと一ヶ月の命って」
話はけたたましい笑い声でさえぎられる。しばらく経ってこんな声が聞こえる。
「あれはねー、実はあいぼんのことなんだよね」
- 228 :25 :2004/07/11(日) 16:33
-
電話を切って、私は謎が一つ増えたことを感じる。いかにも冗談めかした中に、笑い飛ばせない何かが確実に存在していた。私は重い気持ちで考える。しばらく
経って眠りに落ちる。そして目が覚めると忙しい仕事が待っているのだ。過ぎ行く日常の中に私はそれを忘れていく。
やがて梅雨が明けた頃、久しぶりに私は楽屋で辻ちゃんに会う。辻ちゃんは笑って、言う。
「ごっちん覚えてる?あいぼん。あと二週間の命なんだよ」
すっかり忘れてたくせに私はマジな表情をつくって「ああ」と答える。辻ちゃんはちょっと心配そうな顔になる。
「でもあんまり気にしない方がいいよ」
予想以上に深刻な顔になったらしく、そんなことまで言われる。そして私は再び悩みに落ちる。
- 229 :25 :2004/07/11(日) 16:33
-
その夜、私はやぐっちゃんに電話をする。
「あのさあ、辻と加護のことなんだけどさぁ」
しかしやぐっちゃんは険しい声でぜんぜん別の話をする。
「そんなことより知ってる?カオリがあと半年の命なんだ」
私は一気に疲れを感じる。
- 230 :25 :2004/07/11(日) 16:33
-
私の口数が少ないせいか、一分ほどでやぐっちゃんはそっけなく電話を切った。それはやぐっちゃんの気遣いだったのかもしれないが、私にとって今や遠く離れ
たかつての仲間たちはまるきり他人のように思える。やがて私はよしこに電話をする。
「あのさ、よしこ、今モーニング娘。で何が起きてんの?お願い教えて」
ほとんど祈るような気持ちだった。よしこはちょっと口篭もり、それから重苦しい声で呟く。
「もう知っちゃったんだね・・・やっぱごっちんは耳が早いね」
吐き出すようによしこは言う。梨華ちゃんがあと十ヶ月の命だと。私は何かを言おうとする。声にならない。
- 231 :25 :2004/07/11(日) 16:34
-
「あんたバカじゃないの」
圭ちゃんがからからと笑う。私はむっとする。笑われるつもりで電話したんじゃない。
「何がおかしいの」
「何ガって。ていうか普通に考えてみなよ。あんたからかわれてんだよ?だってさ、辻加護が来月。カオリが来年の1月って・・・」
「もういい!」
軽い調子に我慢が出来なくなる。携帯を叩きつけるように切って、また私は一人のベッドに横たわる。カーテンの向こうに辛うじて月が見える。わずかに雲がか
かって。眺めながら私は眠りに落ちる。そして変わらない日常が、目覚めた私を待ち受けているのだ。再び私はそれを忘れる。
- 232 :25 :2004/07/11(日) 16:34
-
八月のある日、辻ちゃんと加護ちゃんが脱退した。全てが終わった控え室で、私は二人に花束を渡す。
「今までお疲れ様・・・」
けれど二人は花束を受け取ろうとしない。かわりに加護ちゃんが目を輝かせて、言う。
「ねえごっちん覚えてる?のの、もう今日までの命なんだよ」
「何言ってんの、それはあいぼんでしょ?」
二人は笑いながら、顔を見合わせたり、私の顔を見つめてみたり、相変わらずとても冗談とは思えない調子が、仕草から、口調から、溢れてきている。私は辛う
じて目をそらし、みんなに笑いかける。
「ねえ、二人こんなこと言ってるけど」
誰も返事をしない。みんな一様に、壁にかけられた時計を見ている。私も思わずそっちを見る。時計が
- 233 :25 :2004/07/11(日) 16:34
-
12時の針を指すと同時に、辻ちゃんが加護ちゃんを殺そうとする。でもその前に加護ちゃんが辻ちゃんを殺した。「あーあ」とやぐっちゃんが呟くのが聞こえ
る。加護ちゃんは返り血を浴びて嬉しそうに笑っている。私は何も思わない。ただ機械的に携帯を開き、圭ちゃんに電話をかける。
「もしもし圭ちゃん?やっぱりマジだったよ」
けれど圭ちゃんはただ笑うのみなのだ。
「バッカじゃないの、あんたからかわれてんだよ」
辻ちゃんはもはやぴくりとも動かない。カオリがまっしろな顔でそれを眺めている。梨華ちゃんは凄いスピードで小指をかりかりと、噛んでいる。加護ちゃん
は、返り血を浴びて嬉しそうに、笑っている。私は呟く。
「そうなの・・・かなあ?」
- 234 :25 :2004/07/11(日) 16:34
-
ボツZ 終
- 235 :26 :2004/07/11(日) 16:36
-
「わたしを探さないでください。探さないで!」
- 236 :26 :2004/07/11(日) 16:36
-
楽屋のテーブルに置かれていたその手紙を、カオリがやたらフキゲンに読み上げる。そして事務的に言う。
「というわけで、探さないでくれってことだから。あれね。探したら死刑ね」
「仕方ないなあ」
みんな納得する。オガワが不思議そうに言う。
「え、誰がいなくなったんですか?」
「それを追求するのも死刑ね。もちろん見つけても死刑」
だるそうにリカちゃんがぼやく。
「なんかあたし見つけちゃいそうで怖いよ」
「ああ、テーブルの下とか覗きづらいよね、これから」
- 237 :26 :2004/07/11(日) 16:37
-
やがて一年が過ぎる。そしたらあの子もこの子もいなくなって。
コンノが言う。
「今度また増えるらしいよ・・・明日会見やるって・・・」
「ってことはまた減るのかな」
「次誰だろ・・・なんか、でも、もう慣れたよね」
冷めた言葉がやりとりされる。ヨッスィが呟く。
「別にあたしもう辞めてもいいけどな・・・」
「うわ、言っちゃった」
「そう言うんじゃなくて、なんか。もう疲れた、やる気しないんだよ」
- 238 :26 :2004/07/11(日) 16:37
-
ふたたび一年が過ぎる。あの子もこの子もいなくなる。けれど人数は大して変わらない。
ミキティが呟く。
「なんか楽屋寂しくなったよね」
タカハシが答える。
「みんなゴハン食べに行っちゃったって。・・・新しい子たちだけで固まっちゃってる感じ、あるよね」
「ん。・・・そういや、こないだガキさんからメールきたよ」
「どうだった?」
「んー、なんか、元気にやってるみたいよ・・・」
- 239 :26 :2004/07/11(日) 16:37
-
そしてまた時が過ぎる。「残っている」のが誰なのか。その基準すらぼやけてくる。
ミチシゲが言う。
「あたし、もうダメみたい。今の路線に耐えられないの。」
「そんな。」
「レイナもおなじだって・・・楽しかったけど、終わりだね。バイバイ」
「待ってよ・・・待ってってば、ねえ・・・」
- 240 :26 :2004/07/11(日) 16:37
-
けれど時は止まらない。あの子はいなくなり、この子もいなくなり、そして。
楽屋で一人、カメイが呟く。
「あたしがリーダーだなんて、笑っちゃうよね。このあたしが、リーダーで、一番センパイ。」
呟きながら、さらさらと手紙を書いている。読まなくても内容はわかる。
「さよなら」
カメイはそう呟いてロッカーの扉を開ける。
- 241 :26 :2004/07/11(日) 16:38
-
「ヤグチさん、久しぶりです」
「カメイ、死刑だよ」
狭いロッカーのなかで、私たちは泣きながら抱き合う。
- 242 :26 :2004/07/11(日) 16:38
-
ボツ小説 終
- 243 :名無し娘。 :2004/07/11(日)
16:42
- 1個だけ使われていないアルファベットがあるのはわざと?
- 244 :名無し娘。 :2004/07/11(日)
16:43
- 更新乙。
リアルタイムで読ませて頂きました。
面白かった。
・・・でこれで完結?
- 245 :名無し娘。 :2004/07/11(日)
16:50
- 謎は謎のままでいいんじゃない
- 246 :名無し娘。 :2004/07/11(日)
23:20
- あっさりとしていながら後に残るこの感じ。
まさに至高のメニューと呼ぶにふさわしいラインナップですな。
- 247 :名無し娘。 :2004/07/14(水)
00:40
- ありがとう
そして
さようなら
- 248 :名無し娘。 :2004/07/14(水)
07:38
- ありがとう
そして
いつかまた
- 249 :名無し娘。 :2004/07/15(木)
01:30
- ( ´D`)<いいらさんはレミ、あいぼんはチーフスペれす
ののはシグ、防具はエプロンれす
北東に移動して漁るれすか?
- 250 :名無し娘。 :2004/07/15(木)
02:44
- 新垣「はいよ!今日は大塚愛の【さくらんぼ】でいってみる??」
亀井「そんじゃ逝ってみようぜ!さくらんぼ☆」
新垣・亀井『♪笑顔咲ク
君とつながってたい もしあの向こうに見えるものがあるなら♪』
亀井「で、ターゲットは誰にするかなぁ?」
新垣「ダーツで決めようダーツ!」
亀井「わかった〜そうしようか!エイッ!」
プスッ
新垣「はい!吉澤さんことよしこにけって〜い!」
吉澤「いってぇぇぇぇぇええええええええええええ!!!!!!」
亀井「相手はやっぱり永遠のカップリング!卒業間近(っていうかリストラ!?( ´._ゝ`)プッ)の石川さんで!」
石川「そこのちゃんねらー。ヒソヒソ話の声になってないわよ。てか楽屋でなにやってんのよ?」
新垣「では、運命の矢が当たった2人には笑顔でくっついてどっかの向こうを見てください」
石川「はぁい?意味わかんないんですけどー。
それよりそこで白熊が何か儀式的な準備運動してるからとりあえず死んだふりしときなさい」
吉澤「すーすーはーはー」
ガチャ ガチャ
新垣「とりあえずくっついてもらいました〜(手錠で)」
吉澤「てめぇらゴルァあああああああああああああああああああああ!!!」
ズガガガガガ
石川「って待って待って!痛い痛い!私ひきずってるってよっすぃぃ!」
亀井「きゃー♪石川さんがだるまのようにっ!すごーい」
新垣「いまだ!エリちゃんずらかるよ!」ダッ
吉澤「おい待てテメェら!なんだこれ!邪魔だっつーの!」ゲシゲシ
- 251 :名無し娘。 :2004/07/15(木)
02:45
-
新垣・亀井『♪愛し合う2人 幸せの空 隣どおし あなたとあたし さくらんぼ♪』
新垣「はぁはぁ。とりあえず危機は去ったね」
亀井「ねぇ、これ本当に楽しいの?てかこんなことしてるとそのうちマジ殺されるよ。マジで」
新垣「気にしない気にしない☆それじゃ、続けるよ」
新垣・亀井『♪もういっかい!♪』
新垣「えいっ!」
プスッ
飯田「いっでぇえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
- 252 :名無し娘。 :2004/07/15(木)
02:45
- ボツ理由:サバってて眠いので不真面目でした
- 253 :名無し娘。 :2004/07/15(木)
03:18
- ノノ*^ー^)うp場所失敗ごめんなさい
78 KB
read.cgi ver2.0 beta3 (03/08/25)